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先端医療開発センター NCC-EPOC

外部評価External Evaluation

1. 概要

2013年9月17日に第5回評価委員会が開かれ、各部署の代表者が過去1年間の研究成果の総括ならびに今後の研究方針について口頭発表を行った。なお、2012年度中に早期・探索臨床研究センターが発足し、臨床開発センターの一部の部署が移行したことから、今回は臨床開発センターと早期・探索臨床研究センター(現・先端医療開発センター)の両方についての評価が行われた。

評価委員会名簿

氏名 職名
澁谷 正史 上武大学 学長
遠藤 啓吾 京都医療科学大学 学長
下遠野 邦忠 国立国際医療研究センター 特任部長
野田 哲夫 公益財団法人がん研究会がん研究所 所長
山本 一夫 東京大学大学院 教授
大西 秀樹 埼玉医科大学国際医療センター 教授
中釜 斉 独立行政法人国立がん研究センター研究所 所長

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2. 全体に対する評価

澁谷 正史

  • 全体によく進んでいる。日本における臨床試験、医師主導臨床試験が積極的意義をもつことを示すためにも、ぜひ1例でも成功例まで育ててほしい。

遠藤 啓吾

  • 素晴らしい研究成果をあげている。

下遠野 邦忠

  • 全体的によく研究・開発が進んでおり、それに必要な体制も整備されつつある。一方、沢山のテーマに対して研究・開発業務に従事する人材の充足率が十分であるのか心配である。近い将来の研究推進や、開発を構想するための人材の確保や時間的なゆとりを確保することは、今後の研究開発に重要な要因になると思う。
  • 両センター(早期・探索および臨床開発)においてミッションを遂行してゆくためには、臨床試験支援室および先端医療開発支援室のいっそうの充実が大切である。

野田 哲生

  • 多くの部門において、臨床試験、臨床研究のレベルが格段に上がっていることが感じられる。これには、臨床試験支援室をはじめとする基盤的支援の充実が大きく貢献していると思う。TR研究領域に関しても、今後の展開が期待される。
  • 一方、機能診断開発や免疫療法開発の部門に代表されるように、意欲的に多岐に亘る研究を展開しているが、やはりテーマの整理を行うとともに、他グループとの連携を通じての機能強化を図ることで、より先進的で実現性の高い研究に集中することを考える必要のある部門も見受けられた。
  • 最後に、中期的視点を離れて、10年間以上の長さでの研究センターとしての存在価値を考えたとき、現在、診断および臨床試験・TRの支援に重要な役割を担っている病理部門に関し、その優れた基礎研究部分をさらに充実させ、今後のTR研究の質の維持を担う人材を育成していただきたい。

山本 一夫

  • 国立がん研究センター内での連携から全国規模に広げていく段階に来ていると感じた。外に協力を求める場合、相手にもメリットが見えるようなアプローチ(説明)の仕方も重要になると思われる。

大西 秀樹

  • 臨床試験を行う際、本人の同意が正しい意思に基づいたものかをしっかり評価してほしい。特に先端的な研究を行っているがんセンターでは、精神腫瘍学のアドバイスを受けながら行うことが望ましい。研究支援体制が充実し、昨年よりも多くのデータが出ており、組織全体が発展していることを感じた。臨床開発センターおよび早期・探索臨床研究センターは、がん研究のモデルとなるセンターであり、もっとアピールしてもよいのではないか。

中釜 斉

  • 早期探索的な臨床試験が効率的に進められるような支援体制を整えてきており、この点は高く評価される。また、早期・探索臨床研究センター(EPOC)としてすでに10本を超える医師主導試験が進められているのは高く評価できる。
  • 一方で、従来、臨床開発センターで進めてきた探索的基礎研究あるいは探索的TR研究と、EPOC事業との両方を併せて進めることに関して、やや困難を感じる。すなわち、EPOC事業における労力が増大してくるなかで、基礎的およびTR的な研究部門に関して十分な議論が行われるだけの余裕があるのか(人材を含め)疑問が残る。このような状況下で、基礎的な部分の考察がやや表面的になってしまっているのは仕方のないことだと理解するが、そう遠くない将来に、"基礎"、"TR"、"臨床研究"のどの部分に、より注力するのかの議論を行い、将来の方向性をより明確にすることが求められると考える。

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3. 各部署に対する評価

診断開発兼バイオバンクグループ

臨床腫瘍病理分野

  • 腫瘍間質細胞の形態解明から診断技術の標準化まで、広汎な範囲の研究事業を着実に推進している。がん微小環境のがん間質細胞の研究を発展させ、がん微小環境を標的とした治療に向けて着実に進展していると思われる。fibroblastの生理的・病的役割について、ぜひ全体像の解明を目指してほしい。
  • また、各種治験・臨床試験にも積極的に参画し、病理としての役割も大きく広げていることは評価できる。その一方で、TR推進のための病理部門の業務負担が昨年に比べても格段に増えており、分子病理学的な基礎研究とTR支援の整理と、そのために必要な人員の確保を十分に整える必要があると考える。

バイオバンク

  • 高いクオリティを有するバイオバンクの維持に大きく貢献している。組織にとって不可欠の基盤組織である。システマティックな運営をしており、大きな財産である。
  • 今後は外部研究機関への情報提供など、有効に利用できるようなシステム構築、スキームの明確化が必要と考える。

機能診断開発分野

  • 分子イメージング、in vivoイメージングなど診断に直結するトランスレーショナルな研究であり、幅広い応用が期待される研究領域であろう。画像イメージング技術開発にはプローブの開発から精度および感度の高い測定法開発など求められるべきものが多いが、そのような状況下で精力的な開発が行われている。MRI、RIを用いた動物実験でよい成果が得られており、臨床研究も着実に行われている。
  • 標識可能なTKI開発など、あまりに基礎的で臨床開発センターになじまないテーマも多く見受けられる。研究テーマをもう少し整理する段階に来ているのではないか。ケミストリーから情報処理まで幅広く手がけているが、個々にポイントを明確にして適切なアプローチができるように努めてほしい。企業あるいは薬・化学系大学と効率のよい共同研究体制を構築して進めてほしい。

内視鏡機器開発分野

  • 新規の内視鏡開発において、種々の前臨床および臨床試験を積極的に推進している。将来のがん治療のためのチャレンジングな研究が進められており、いっそうの進展が期待される。
  • 機器開発と連携した新しい研究分野であるが、一部臨床試験にもチャレンジしており、すぐに応用可能な研究領域である。連携を通した横断的な新しい視点で新しい診断技術をいろいろと提案してほしい。
  • さまざまな挑戦を続けているが、各機器開発における目標設定が不明瞭ではないか。単に簡便に存在診断ができればよいというものでもないのでは。例えば、転移巣や非連続的病変の診断能力といったより具体的な研究目的の設定が必要と考える。ある程度焦点を絞って、1つでも実用化へ向けて進めてほしい。

治療開発グループ

新薬開発分野

  • 新規大腸がんマーカーの発見や不溶性フィブリン認識技術など大変ユニークな成果である。不溶性フィブリンに対する技術は興味深く、ぜひTRを進めてほしい。
  • DDSに関して独創的な研究を続けている。抗がん剤内包ミセルの仕事は優れた成果を出しつつある。DDS研究からさらに前進し、臨床に根ざした応用を考えつつ研究を進めており、センターのメリットを有効に活用できる基礎的研究である。他の分野との連携もさまざま可能であると思われるので、ぜひ進めてほしい。実用化を期待している。
  • 薬効評価システムとしてのより至適なモデル系の利用、あるいはモデル構築についても検討してほしい。

精神腫瘍学開発分野

  • がん患者の共通の問題である"早期からの緩和"や"高齢者のせん妄"の問題に精力的に取り組んでいる。今後の超高齢社会におけるがん医療のあり方を考える際に、きわめて重要な問題と考える。難しい分野であるが、優れた成果が得られている。頑張っていただきたい。
  • がん患者およびその家族が経験する精神的問題に研究レベルでよく対処している。課題を抽出して研究を行っているところがよいと思う。今後は実用化を目指してほしい。
  • がん患者の治療における精神腫瘍学的課題の解決に向けて情報収集を行い、優れたプログラム開発を行っている。心理的ケア、緩和ケアのスタンダードとなるようなシステムを構築してきた実績は素晴らしい。長期的なフォローアップを次に考えているなど、新たな問題点にも素早く取り組んでいる点も評価できる。
  • その一方で、本センターの責務を考えると、得られた成果の拠点病院群への浸透に関する努力が不足しているように感じる。国内のがん臨床における状況を把握・評価するためのシステム構築も進めてほしい。

粒子線医学開発分野

  • 患者数が増え、特許数も多く、優れた成果を出している。大変に精力的に臨床研究を展開しており、臨床試験のクオリティが格段に上がっているのが印象的である。臨床開発センターとしての一体的な研究推進の成果と考えられる。この2年間で陽子線治療の実施体制が十分に整ってきている。治療患者数が急速に増加していることも評価できる。
  • 副作用の少ない放射線治療を目指して、臨床試験の実施体制をつくろうとしており、日本の標準となるべく標準的なプロトコール、評価方法などの確立を目指して推進してほしい。
  • 異なる施設における異なる設備の医学物理学的標準化は重要であるが、果たしてそれは可能なのか。スキャニング照射法や動くものに対する位置確認システムの開発などは期待できそうである。保険適応へ向けて、重粒子線との差の説明や説得力のあるデータづくりを進めてほしい。

早期・探索臨床研究センター

トランスレーショナルリサーチ分野

  • 大規模ゲノム解析に基づき、がんと相関があると思われる候補遺伝子が解読できており、興味深い。予後のデータとどれだけ詳細に相関を見るかによっていろいろな情報を読み取ることにより、重要な情報が得られると期待される。今後は薬剤抵抗性の解析やマーカー開発などへ結び付けてほしい。
  • クリニカルシークエンスの確立に向けて高質な研究を展開している。ゲノム診断の応用について優れた結果が得られている。病態、治療成績などとの緻密な連関を進めて、独創的な成果が生まれることを期待したい。
  • 肺小細胞癌におけるPI3Kの変異とc-Mycの相互排他性の成果は興味深い。しかし、今度は肺がん以外に臓器を広げる場合には、研究の方向性と臨床展開の可能性について、そのfeasibilityを十分に検討した上で進めてほしい。

免疫療法開発分野

  • がん免疫療法の実現に向けて、各種の課題解決の試みを行っている点は評価できる。ただし、前向きな進展を示す成果は今の段階では多くない。ペプチドワクチンのin vitroでの効果は十分に検証できている。一方、in vivoではいくつか問題点があるようであり、投与方法や処方などの選択によって効果も大きく変わるように思われるので、今後の検討が必要か。
  • 免疫療法がメラノーマで成功した理由を基礎的に十分検討して、他の腫瘍への応用に活かしてほしい。
  • 免疫療法の問題点が明らかとなっており、克服できるかどうか、解決すべき課題も多い。免疫療法、ワクチン療法の単独での治療効果に限界があることはよく理解できたが、個々の問題点の解決に向けてのstrategyについても、より科学的な考察が必要と考える。免疫療法の将来を担う意味においても科学的なエビデンスの蓄積が必要と思われる。今後の発展を期待する。

臨床試験支援室(Office of Clinical Research: OCR)

  • 支援システムとして十分に構築・整備されており、監査の充実も評価できる。多くの医師主導治験を推進しながら、Expand Access Programの確立を目指すなど、着実な進展がみられている。支援システムの整備により、前臨床試験を進めやすくなっている。早期臨床開発のための体制整備に多大な尽力をされているのは高く評価できる。
  • 今後は次の段階も視野に入れて、さらなる整備を期待する。次の目的としてどのようなことを目指すのか、実績の積み重ねのほかに何を求めていくのかなど、どれだけ外に目を向けるかなども含めて頑張ってほしい。
  • まだ成果が明らかとなっていないが、費用効果を含めて解決する課題も多い。

先端医療開発支援室[現・TR支援室](Office of Translational Research: OTR)

  • TR分野とも関連して、情報管理、情報処理を担う重要な部門であろう。がん種ごとの拠点病院ネットワークの構築などは研究・開発の均一化を測れるし、開発の効率を上げる。非常に重要な活動であり、着実に進めてほしい。TRの支援まで行っているのはとてもよいことであり、ここから日本全体へ広げてほしい。
  • 今後、全国規模のスクリーニングシステムに構築していくには、最初の実施例が成功するかにかかっている。情報提供者にどれだけフィードバックできるかという点に関しても努力してほしい。
  • また、バイオバンクについては共同研究へ向けて外へのアピールも十分に行ってほしい。成果があがれば患者さんの参加へよいフィードバックが生まれると思われる。

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